Solid
専用住宅
W造・F3
延床:242.22㎡
東京都目黒区
春には美しい桜を咲かせる緑道がある道路に面した計画地。初めて訪れた時、旗竿地形状の影響により隠れ家のようなイメージを私に抱かせた。しかし、敷地の竿形状部分を入り、奥まで行くと東西に間口の広い敷地で、静寂と沢山の光量が感じられた。
クライアントのオーダーはハッキリしており、設計を始める前にはA4用紙数枚に的確な注文がイメージ写真付きでびっしり書かれた要望書を作成されていた。要望書を読み解くと、伸びやかで収納が多く動線が機能的である事が伺える。それにしても、しっかりとした要望書である。一般的にクライアントの要望を聞いていると敷地のポテンシャルを超えてしまう例が沢山あるが、素人なりでも自分で間取りを描いてみて検討している事に、設計のプロとしてはクライアントの想像以上の空間を提案したくなるのである。
ファーストプレゼンで私が提案したのは構造的な挑戦も含め都市型住宅ならではの閉塞感を如何に解消して伸びやかな空間にするかである。1階にプライベート空間をまとめて、2階LDK空間と屋上や3階を繋げる空間でハイサイド窓から空も捕まえるコンセプト。シックなマテリアルを採用して立体的な空間でも落ち着きが感じられる様に配慮した。提案した大きなゾーニングや考え方は共感を得て戴いたが、LDK吹き抜け位置や玄関を縮小し収納を拡幅する事など、初回提案から何度も打ち合わせを重ね最終的には変更している。
クライアントは設計中、自分でIot関係電気設備、家電、家具や絵画を細かく調べ私に相談してくれた。冗談で検索王と言いたくなるほど実(まめ)であり、工事中、クライアントから一度決めて発注間近であったLDK床タイルで良品がメーカーセールしていると連絡が有り、変更したほどである。
吟味されたマテリアル、照明計画、造作家具、洗面化粧台、特注キッチン、キッチンと同じ素材で製作したダイニングテーブルなどなど、空間に深みが生じるように陰影を意識しながら設計をした事がインテリアとマッチしてこの家のクライアントらしい空間に出来たと思っている。 本当はこの家の呼び名を「Cool」としようとしたが軽く感じる単語なので、アメリカのスラングで最高にかっこいい、しっかりした、と言う意味でも使われる「Solid」(ソリッド)と勝手に呼んでいる。この家のイメージにより合っていると思うのである。
architect:Takeshi Kobayashi
photographer:Shigeyanagi・etc