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専用住宅

W造・F2

延床:125.70㎡

埼玉県秩父市

 埼玉県は夜祭で有名な秩父市に建つ個人住宅。施主はずっと前から知っている大工さん。プロに設計依頼される事は非常に光栄です。土地探しの段階から相談を受けており最初の相談から2年程度、完成まで時間が掛かっている。いくつかの土地情報を検討していると施主が私に対して期待する部分が見えてきていた。もちろん施主は大工を生業としているので、いろんな家を作ってきた経験があり、自分では考えつかない自宅にしたいという期待。その期待に応えるべく敷地が選定された。

 秩父市と聞いて山間部のイメージを当初抱いていたが、敷地は宅地分譲された住宅地である。周りはハウスメーカーの建物が建ち始めており、日本中どこにでもありそうな風景が出来つつあった。その様な敷地でまず私が考えたのは気候条件である。秩父市は盆地を形成しているので一日の寒暖の差と夏冬の気温差が埼玉県の他の地域と比べると大きく、特に冬場は氷点下になる事も多い地域である。その様な自然気候に対して深い軒のある家にするか鉄板で包んだ家で耐久性を高める事にするか悩んでいた。

 施主からの条件には構造はツーバイフォー工法、左官工事は極力無くしたいと言われ後記した鉄板で包む事にした。このガルバリウム鋼板による外壁には紆余曲折があり、私が目指した納まりでない部分があるがシンプルな建物フォルムの為、我慢できるギリギリの範囲である。今回出来なかったアイデアはいずれどこかで設計したいと考えている為、秘密にしておく。

 外観は黒い箱。シンプルな外観、トンネル、パティオにスキップフロア。楽しい空間を詰め込んでいる。1階LDK空間にはスタディーコーナーがスキップフロアで上がった部分に設けてあり、ワンルーム的な空間に立体的な操作を施して光の導入にも工夫を凝らしている。またパティオを囲むようなLDK配置として自然に対して開放させている。ポーチとしてのトンネルは玄関、施主の趣味部屋、そしてパティオを経由してダイニング、リビングへもアクセス出来る場であり、屋外を屋内へ引き寄せる効果を持たせている。そして、施主の趣味部屋は少々荒っぽくベニア造りとし後々のカスタマイズを考えた仕様とした事や主寝室にもスキップフロアを用いた空間に妻の強い希望であった洗濯物干し用のサンルームを接続させた事により多様な成長が期待できる建物となった。

 完成後、改めて眺めていると町並みの中で、この家だけ凄みが漂う空気感がすでにある。奇抜なデザインを狙って施した訳ではない。あらゆる角度からスタディーして導き出された結果の住まいである。

 工事中、細かい事を言って施主(大工さん)を困らせたが、難しい納まりも丁寧な仕事がされた事から当初の期待に応えられたのではないかと思っている。

architect:Takeshi Kobayashi

photographer:Shunsuke Maruyama

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