AS

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AS

2世帯住宅

W造・F2

延床:135.94㎡

東京都稲城市

 東京の郊外、多摩ニュータウン。丘陵地形の流れに沿うように1980年代に開発された街は無電柱化による景観や街を彩る街路樹などにより、落ち着いた街並みを形成出来ている成功例である。若夫婦から依頼を受けて初めて敷地を見た時は南東下がりの地勢から良好な採光と心地良い風が感じられた。
 その様な敷地に設計させて戴いたのは両親と娘夫婦の二世帯住宅。二世帯住宅を考える時、寝室以外、両親世帯と同じサザエさんのマスオさんは偉いな~と思うのである。確かに水廻りなど1ヶ所に集約出来ればコストや面積的な効率は良いが、生活時間帯や趣味嗜好が違えば空間は別々の方が双方安心なはずである。その様なざっくばらんな話を施主としながら、じっくりと住まいに対する考えをお聞きし、付かず離れずの関係の認識を確認していった。玄関は1ヶ所で良いが、その他は全て別々という条件が決まり、私が考えたコンセプトはAS(アス)。各々の世帯が等価の関係になるように考えた二世帯住宅である。
 道路から一段上がった敷地なので両親の今後も考え、車イスでのアクセスも可能な、ゆったりとしたアプローチとし、両世帯が屋外をアクティブに使えるように道路から直接庭へのアクセスも出来る動線も設けている。そして、玄関は他世帯の生活の邪魔をしないように縦動線(階段)を隣接させ効率的に所要室の広さを確保させた。

 1階は両親世帯、LDKに畳の小上がりを設け、ちょっと寝転がったり、洗濯を畳んだり、みんなが集まったらステージにもなる様に考えたスペースである。また、今までの家は独立キッチンであったので、対面オープンキッチンにする事において物が溢れる事を想定して、システムキッチンを造作家具で囲い収納量と機能性を向上させている。2階若夫婦世帯は高さ制限で低くなる部分を効率的に水廻りなどに使い、地勢から享受出来る南東方向の空(自然)をより感じる様にリビングの高天井を贅沢な空間として創出させている。また、二世帯双方から利用できる広々小屋裏収納も設けている。 AS。各々の世帯が日々の生活でストレスを感じない様に考えた家。しかし、私は一つ屋根の下で生活を共にする皆が一緒に団欒している事を期待しているのである。

architect:Takeshi Kobayashi

photographer:Shigeyanagi

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