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共同住宅

RC造・F3

延床:268.25㎡

東京都板橋区

 この建物の依頼主(個人)からは、すでに3棟もの共同住宅を設計させてもらっている。いままでは比較的広い道路に面した敷地であったが今回の計画地はセットバックを必要とする狭い前面道路であり、周辺環境は木造アパートや2階建ての住宅に囲まれている。まさに住宅密集地の言葉がぴったりの場所である。 幸いにも計画地南側は通路状に出っ張った形で6m道路に1.8m接道しており、避難経路と共に住室を南に向ける事が可能である。また、南側隣地の地盤は計画地より約50cm下がっているので、1階住室の専用庭への良好な採光、通風が期待出来る様心がけた。この専用庭は都市の中にポッカリ生じた隙間となり、住まい手により自由にカスタマイズ出来る空間である。

 都心における密度の高い住宅密集地である為、施工時における苦労は絶えなかった。まずは、既存建物の解体。隣地にほぼピッタリと寄り添いあう様に建てられていた為、細心の注意を払い人力で解体作業を行った。着工後、小型車両しか進入できない為、山留、根切、型枠、鉄筋、コンクリート打設と人力を中心とした作業となり、監理も通常通りには行かない場面に何度も遭遇しながらの工事となった。特にコンクリート打設においては当事務所からも竹竿を持参して参加し、ワンフロアー約21坪の現場に打設時は20人が集まり密度の高いコンクリートを目指して施工を行った。

 このクライアントと施工者の情熱によるコンクリート打ち放しは存在感十分である。
都心で生きる為に用意されたコンクリートの箱は、今後、いろいろな表情を見せる事になるだろう。時には凶暴に、時にはやさしく・・・・

 プランニングにおいては、全ての住室が角部屋になるように配置させ、大きさも9住戸に対して4つの住室サイズを計画した。このように住室サイズにバリエーションを持たせる事により、住まい手の世代がなるべく偏らない事を狙っている。共同住宅に限らず、都市には、いろいろな人が住んでいる。そんな社会性をこの建物に取り込む事により自然な人間関係や都市に住まう礼儀作法が住まい手の中に構築される事を考えている。また圧倒的な質量を持つコンクリートに設計ではポツ窓による楽しさ、光の明暗による神秘的な空間など、変化を与える事により見る者の印象を制御している。

 都市で集まり住む場所として、多く有る密集地に対しての回答の一つと考えている。

architect:Takeshi Kobayashi

photographer:Shunsuke Maruyama

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