COZY

　新宿区袋町。神楽坂に近接するこの地は昔、袋小路になっていたところから袋町と呼ばれるようになったらしい。神楽坂の近くだけあって坂の多い地域でもあるが、計画地は牛込台地の上に位置し地勢的に環境の良い場所である。また商業地域からも程よく離れていて神楽坂の喧噪は全く感じさせない。そのような地にゆったり寛げる家族5人の為の家を考えた。

　敷地は東南角地で東側道路が北に向かって約1.8ｍ下っている。よって北隣接地は計画地より下がっており、西面以外、都心としては開放感のあるロケーションである。当初案では、この東側道路の高低差を利用した地下ガレージを設け4層空間を提案していたが、地上だけでも要求されたプログラム（所要室空間）がゆったり確保出来る事が判り、最終的には地上3階建てとなった。

　条件の良い敷地。矩形の空間が積み重なるボリュームに設計が落ち着いてくると設計者はディテールに拘りだしたくなる。しかし、そのような拘りには魔力があり、のめり込み始めると全体を見失う傾向がある。一番大事なのは住み手の為に考えるという事。いたずらに手を加え自己満足だけは避けなければならない。クライアントと打ち合わせを重ね、期待している空間、使い勝手に対して一つ一つ丁寧に考え、応える事から生まれたディテールが一番良い。そんなシンプルな考え方にさせてくれたクライント。

　設計打ち合わせ中、可愛い小さな3人の子供が各々好きな場所で自由に寛いでいるのをよく目にした。テーブルの下、ソファーの裏、本棚の隙間、子供は居場所を見つける天才である。そんな子供たちを大きな心で包み込むように両親が接している風景がとても印象的で微笑ましく、この家でも居心地の良い場所（Cozy）を見つけてもらいたいと思って設計したのであった。