心象の家
専用住宅
W造・F3
延床:113.94㎡
東京都目黒区
心象(シンショウ)とは心の中に描き出される姿・形、心に浮かぶ像の事である。
田園都市線駒沢大学駅から程近い住宅街である計画地は南にマンション、東に戸建て、西が前面道路、北が更地で近い将来近接して建物が建つ事が想定された。
第1種低層住居専用地域・第1種高度地区であるため、周りは比較的ゆったりとした住宅街であるが、南のマンションは共用開放廊下が計画地側に向いており、プライバシーが害される事が容易に想定できる為、安易に南を開放する事はストレスとなると感じた。
そこで高度斜線(高さ制限)により南と北の2つのボリュームに分けることで解消する事を試みた。南ボリュームは3階、北ボリュームは2階+吹き抜けとし3階レベルで双方の間に天空の光が降り注ぐスリット状のルーフバルコニーを挿入して南3階部分のプライバシーと2階LDKの採光と視線の抜けを確保する事とした。この廊下状(スリット状)のルーフバルコニーにはプランターボックスを吊下げ緑化を施し心地良い緩衝帯の機能を持たせている。2階リビングを見上げると3階ルーフバルコニーの緑が見え、その先に3階南ボリュームの部屋が見える構成である。
やはり都市に住んでいても自然が感じられる空間にしたいのである。緑葉からの木漏れ日、風に揺れる植栽。吹き抜けとなったLDKには約7帖のテラスバルコニーも隣接させ今後、緑化が施せるスペースとしている。もちろんテーブルなど置いて楽しむ事が出来る空間でもある。
実はこの計画、施主と初めてお逢いする前に土地情報、家族構成と数枚の施主好みの写真から基本計画をしてしまったのである。私の心象である。どうやらこの心象した計画が気に入って戴けた様で打ち合わせは初期段階から詳細な事柄から話し合う事となった。
「この壁は黒板にしたいですね。」「ここには水槽を置きたいです。」基本設計時点からすでに実施設計のまとめのような打ち合わせ。密度の濃い打ち合わせとなった。
本当はこの家の形は建主の心象であったのではないかと、今思っている。
architect:Takeshi Kobayashi
photographer:Takuya Shimosato・etc