Spread
専用住宅
W造・F2
延床:293.39㎡
東京都目黒区
閑静な住宅街に位置する100坪を超える敷地は、隣家との離隔距離もあり、都内としてはゆったりとした空をより感じる計画地である。南側前面道路から約1m地面が上がった形状であるが、クライアントは高齢になった時を考えバリアフリーを強く望まれた。道路からフラットでアクセスすると1階は半地下にしない限りスキップフロアになるので、半地下は避け、2階建てであるが1階に生じる階段8段ほどのスキップフロアをバリアフリーにするべく、エントランスフロア、1階、2階と3ストップのエレベーターを設けている。
1階のスキップフロアによりエントランス空間は約4mの天井高さとなり魅力的な空間になることが想像できたので、立体的な空間を感じさせるために玄関ドアを開けた時、上がった先の遠方に少しだけ階段が見える様に配置させている。少しだけ見せているのは、空間に連続性を持たせワクワク感を創出させるためである。
ヒアリングを重ねるとクライアントはペットのギリシャリクガメ含めた家族みんなが伸び伸びと過ごせるシンプルな空間を求めていると感じたので、どの部屋も内外のプライバシーが守られ、良好な光や風が入る様にプランニングを行った。
1階には各個室に面して20帖超えのプライベートコートを配置。各個室どうしの窓は直接、視線が合わないようにしてあり、ギリシャリクガメを遊ばせておける庭でもある。2階のLDKフロアにも約30帖のテラスバルコニーを設け、外部からのプライバシーを確保。このテラスバルコニーのプライバシー確保の壁がシンプルキューブとしてファサードに出現している事で外部からは閉じられた家に感じさせるが、リビング天井を南上がりの勾配天井にして空を捕まえて、視線が抜ける窓を配置する事により、内部空間を広げる(スプレッド)事を狙っている。また、広いテラスバルコニーには緑化を施し、外部空間を強調させているのも広がりを感じさせる要素としている。 今後、木々が育つ事で鬱蒼としても心地良い木漏れ日などにより、クライアントの日々の生活も気持ち良く伸び伸びと広がる事を想像して設計した家である。
architect:Takeshi Kobayashi
photographer:Shigeyanagi