紛らわしい建築基準法:延床面積

建築基準法に「延床面積」という言葉はありません。あるのは建築基準法施行令第2条第1項四号に定義された「延べ面積」です。また、その定義には2種類あり、単純に建築物の各階の床面積の合計の延べ面積と、建築基準法第52条第1項の容積率の基礎となる延べ面積です。一般の方には判りにくい法文の名称定義で、同じ言葉で2つの意味を示す延べ面積。先日、一級建築士勉強中のスタッフと雑談していて改めて判りづらいと感じています。

延べ面積は2種類ある。

少々実務的な所では確認申請書第3面11欄では延べ面積の大項目の中に「イ.建物物全体面積(延べ面積)」の記入が求められ「ワ.延べ面積(容積率の基礎となる面積)」を記入する事になっています。これも、延べ面積という2つの意味を持つ言葉によって初心者や一般の方には非常に紛らわしい記入欄だと思う次第です。ちなみに申請書にはカッコ( )内の解説はありません。
上記から日々、建築設計実務をしている者としては混同しないように全体の面積を「延床面積」と呼び、容積率の基礎となる面積を「容積対象面積」や「容対(ヨウタイ)」と呼び区別しています。

確認申請書類
< 建築確認申請書類 >

建築物全体:延べ面積

建築物全体の延べ面積は建築物各階の床面積の合計による事になっています。そこでポイントになるのが建築基準法施行令第2条第1項三号に定義された「床面積」です。この床面積にも細かなルールがあり、複雑な建物の床面積算定には一定の経験が必要になります。

容積対象:延べ面積

容積率とは建築基準法第52条第1項に定められた割合(場所や条件で変わります。)で、建築物(容積対象の延べ面積)は敷地面積に対して、この容積率以下にしなければなりません。ここでポイントになるのが容積率の基礎となる面積を算定する時に不算入部分があるという所です。こちらも自動車車庫等、エレベーター昇降路、住宅などの地下部分などなど。限られた敷地で出来る限り広い建物を建てようとすると、この算定が土地の有効利用に大きく影響を与えます。

まとめ

注意する事としては一般に「延べ面積」と言えば建物全体の床面積を示す事(延床面積でも通じると思いますが)で、法第52条第1項の容積率制限の場合のみ「容積対象面積」と言うのが誤解の少ない表現だと思います。良く街中で見かける建築計画お知らせ看板も建物全体の延べ面積表記だけだと容積率オーバーしているのでは?と思われる方もいるかもしれませんが、このような事からです。

また余談ですが建築基準法で案内図という名称もありません。基準法では付近見取り図が正しい名称となります。

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